読んだ『ミュージック – 「現代音楽」をつくった作曲家たち』

これはとんでもない本だと思う。

何回か紹介している木石岳『はじめての<脱>音楽 – やさしい現代音楽の作曲法』(自由現代社)や、沼野雄司『現代音楽史』(中央公論社)などで名前を見たことがある人たちを含む、17 名の現代音楽家へのインタビュー集。ハンス・ウルリッヒ・オブリスト著、フィルムアート社。

一気に読んでしまう本と、ちょこちょこ繙いては数十ページ読んで閉じ、また繙いては読んで閉じるのを繰り返す本と。
わたしの場合、二種類の本がある。
この本は後者で、2 月に入院したときに読み始めて、行きつ戻りつしながらちょこちょこ読み進めて、ようやく読了した。

読み始めてから半年の間には、もちろん他の本も読んだし(音楽関連に限れば小沼純一編『ジョン・ケージ著作選』(筑摩書房)とか柳沢英輔『フィールド・レコーディング入門 – 響きのなかで世界と出会う』(フィルムアート社)とか)、吉本隆明・坂本龍一『音楽機械論』(筑摩書房)を再読したりもしていて、そこで見た名前が確かこの本にもあったはず……とページを戻って読み直したりしていたから、半年もかかったのだろう、きっと。

知らない名前、知らない言葉、知らない概念もたくさんあって、調べてもわけがわからないまま読み進んだり読み直したりしていたわけだけれど。
読んで分かってしまう本ももちろん好きだし面白いし大切だけれど、わかってしまえばそれで用済みになってしまうと言えなくもなくて。
その点、読んでも分からない本というのは、何というか、折に触れて何度も何度も読み返すから、わたしの中で大切な本になる確率が高い。この本もきっとそう。

ああ、でも、そう考えると、当たり前だけど、文学とはやっぱり違うんだなあ。
覚えちゃうほど何度も読んで、でもまた手にしてしまう小説や詩集は、わたしにもあるものなあ。

Amazon のレビューにもあったけれど、わかりにくい訳文が散見されるので、原書もペーパーバックで買った。

原書と訳文を比較すると、ニュアンスの理解の精度が上がるのはもちろんだけど、訳文の(日本語ならではの)工夫などに気づいたり、発見がいろいろあって、面白い。

気になるところにアンダーラインやら書き込みやら付箋やらってしてたら、読み終えたら何かすごいことになってて。
それを全部ここに引用してたら大変だからしないけど、Pauline Oliveros のインタビューに特に勇気をもらったことは忘れたくないから書いておく。

大切な本がまた一冊増えたことが、とてもうれしい。

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