空に一羽の鳥もなく。
“Belphegor” を出したときの記事でちょっと触れた「次のアルバム」を、Elly と相談しながら作っている。
「取り憑かれたように」なのか「憑き物が落ちたように」なのか、どっちなんだかわからないけど、ようやく気持ちと身体が追いついてきたみたいで、これまで億劫だったのが嘘みたいに、暇さえあれば DAW やモジュラーシンセサイザーを触っている。
妙にすっきりした気持ちが続いているから、きっと「憑き物が落ちた」のが正しいのだろう。
もちろん、それは Elly のおかげなんだけど。
アルバムの音源は、1 つ目に入れる予定の “Belphegor” とは別に 2 つが完成して、1 つは保留中。
全部で 8 つの音源を入れる予定なので、3.5 個完成、残りは 4.5 個という感じ。
作った音をいったん保留にするのはこれが初めてじゃないけど、あれこれ手を加えてなんとか形にしようとしながら作ったものが、だいたいペンディングになりがち。
スルッとできあがるときとそうでないときがあるのは当たり前だと思っているし、スルッとできあがることに特別な価値があるとも、それを目指そうとも思っていないけど、そこにある「差」は何なんだろうなあって思う。
あれこれ手を加える中で、モジュラーシンセサイザーたちと遊んでもらったりもしたんだけど、どうもうまくはまらなくって。
はまらないけど、あの子たちのおかげですごく好きな音が録音できたから、どう使おうか考えてたら、前に浮かんでメモしたままほったらかしていたタイトルが、ふと脳裏をよぎった。
「空に一羽の鳥もなく」
七五調なのも含めて気に入っているこの言葉を頭の中で転がしながら、録音を聴き直して、フォルダを掘り返してサンプルを探して、入れたい音を新たにサンプリングもして、録音とサンプルをこれまでやったことのない方法で鳴らしていじって……わりとスルッとできた。
Ableton Live の Simpler を初めて使ってみたけれど、想像以上に面白かった。これからも工夫しながら使い込んで、もっともっと使えるようになりたいなあ。
いつも以上に何度も何度も繰り返し聴いて、納得いくまでこまかくいじったり録り直したりしたから、時間はかかったけれど、何をすればいいのか分かっているというか、もっとこうしたいああしたいと思ったときに、それを実現する方法まで一緒に頭に浮かんでいるというか。
ああ、そうか。
保留になる音源は、もっとこうしたいああしたいと思っても、そのために何をどうしたらいいのかわからないまま試行錯誤したやつだわ。
一晩置いて、Elly に聴いてもらいながら自分でも聴き直して、さらに少し手を加えて、完成。
タイトルにも音源にも、わたしなりに込めた思いはあるけれど、それを言い募る気は相変わらずないし、これについては言い募る資格もないような気がしているから、音をそっと差し出すのみで。
というわけで、新作 “No Birds in the Sky” です。この写真、警察署の建物なんです。