細部まで詰め切らぬまま。※長文です。あしからず。

先日 9 月 20 日は、こちらのライブに出演させていただきました。
まず最初に、お越しくださったお客様、素晴らしいライブにふたたび出演する機会をくださったばねとりこさん、共演者の皆様、そして environment 0g の平野さんに、心よりお礼申し上げます。
ほんとうにありがとうございました。
当日のタイムテーブルはこんな感じでした。トップアクト。
14:00 | Door opens |
14:30 – 14:50 | Miss Canine Hoe (JP) |
15:00 – 15:20 | Banetoriko (JP) → bandcamp |
15:30 – 15:50 | Sissisters (US) → bandcamp |
16:00 – 16:20 | Hypertrophy (US) → bandcamp なんと Bastard Noise の人だった……めっちゃ好きだからびっくり。 |
16:30 – 16:50 | → Slit Throats (US)bandcamp |
17:00 – 17:30 | Parasite Nurse (US) → bandcamp |
時はちょっとさかのぼって。
7 月中旬の土曜日に、ばねとりこさんとご飯を食べる機会があって。
ご飯というか、二人だと「またあそこにしましょうか」となって、昼間からビール飲みながらいろんなことを話す会になるのだけれど。
その日は、お店を出てから近くの大きな本屋に二人で行って、飲みながら話題になった現代思想の棚の前で、これも読んだがわからん、あれも気になってる、と笑い合って。
ばねとりこさんが教えてくれた本をわたしも買ったのだけれど、その時にバタイユの『マダム・エドワルダ』(阿部静子訳・月曜社・2022)も買って、翌日に読んだ。訳者解説も素晴らしいのでオススメ。
その一週間後くらいに、今回のライブのオファーをばねとりこさんからいただいた。
わたしが生まれて初めて出演させていただいたライブの「第 2 章」に出演しないという選択肢などあり得ないので、何も考えずに「出演させてください」と即答。
ただ、7 月終わりから仕事の内容が大きく変わり、8 月中は多忙を極めるし、9 月以降も忙しい日々が続くのは見えていたので、準備に手間取るだろうなとは薄々感じていた。
準備に手間取るだろうと感じていた理由は、もうひとつあって。
今でもまだそうなのだけれど、仕事が忙しいせいなのか、自分が聴きたい音のイメージのようなものが、自分の中でとても曖昧になっている。
7 月に音をリリースしたときにもそんなことを書いてるけれど。
なので、スタジオは三回分予約を入れて、手を動かして大きな音で聞きながら作り上げていこうと考えていた。
ずっと使っていたモニタースピーカーが壊れたのもこの頃だったかな……。
ノイズが混ざってまともに聞こえないので、一度切ってからもう一度スイッチを入れたら、いい感じのノイズが出たので、iPhone で録音しながらもう一度スイッチを入れて、録れた音を使うところからスタートしたんだったはず。
ちなみに今のモニタースピーカーは、Elly から譲ってもらった IK Multimedia の iLoud Micro Monitor。
聞こえ方があまりに違うのでびっくりした。めっちゃ音がいいし、ヘッドフォンで聞き逃してた音も聞こえる。
音の空間的な位置まではっきりわかるから、すごくありがたい。ありがとうね、Elly。
iZotope の Vinyl というプラグインが作ってくれる Lo-Fi 感が好きで、それも使うことにして。
Ableton Live で作った音をモジュラーシンセサイザーたちにいじり倒してもらって、アウトプットすることにしようと考え、Synthrotek のケースにモジュールを移し替え、パッチングまでしてから、一回目のスタジオへ。
ぜんぜんよくない。いくらいじっても、ちっともよくならない。
そこから多少手を加えて、二回目のスタジオにチャレンジしたものの、結果は同じ。
もはや敗北感に近いものを感じてスタジオを後にし、作ったセットを捨てて新しいセットを作るところからやり直し。
その頃は Manuel Carbone の “n|a|ether” がとても気に入ってそればかり聴いていたから、この音のような「静かなノイズ」にしたいという気持ちが強まっていた。
一方で、前回の「第 1 章」のときは Ableton Live がメインだったけれど、今回はせっかくモジュラーシンセサイザーたちと一緒に出演するんだから、こっちをメインにしようと思い直し、モジュールを入れかえ、パッチングとルーティングをやり直して、Ableton Live はドローン(Vinyl のノイズと壊れたスピーカーのノイズから作ったもの)と、モジュールだけでは足りない分の CV を出力するのに使うことにした。
何度でも言うけど、Ableton Live は、わたしのやりたいことがだいたい何でもできる。ほんと好き。
そして三回目のスタジオ。手ごたえが全然違った。
「静かなノイズ」とはちょっと(だいぶ?)ほど遠かったけれど、少なくとも自分の納得できる音を聴くことができた。

いつもならここから、20 分という持ち時間だから、ここは持ち上げて、ここで落として……という感じで、Ableton Live でトラックごとにオートメーションを書いて、時間通りにきちんと終わるように仕込むんだけれど。
休日や仕事の後は疲れ果てて、その仕込みにかける体力がなかったし、スタジオでモジュラーシンセサイザーたちと遊びながらグリグリ音を作るのがものすごく面白かったこともあって、当日もアドリブで行ってみようと腹を括った。
カンペを作ってオーディオインターフェースに貼ったりして、少しでも本番の負担を軽減しようとはしたけれど、それがせいいっぱい。
前日の夜に最後の準備をしているときに、ふと思いついて MIDI コントローラも使うことにしたりして、ほんとうに最後の最後までセットアップで悩んでいたので、今回は音のみで映像はなし。

そして当日。
入院している Elly は来られないので、チャットで話しながら、ひとりで久しぶりの environment 0g へ。
入り口で開くのを待ちつつ、「早く着きすぎちゃった」という外人のお兄さんにご飯を食べられる場所を教えたりしていたら、平野さんが開けてくれたので、荷物だけ預けてコンビニに行ったら、ばねとりこさんとパートナーのさちのさんにバッタリ会ったりして。
「第 1 章」でもご一緒させていただいた Sissisters さんが、わたしのことを覚えていてくれたのも嬉しかった。
他の出演者とも挨拶したり、機材をセットアップしたり、音出しをしてみたり(相変わらず一瞬で終わったけど)、煙草吸ったりおしゃべりしているうちに、オープンの時間。

刺繍する犬さんの作られた、”noise” と刺繍の入ったTシャツを着て、今回も演奏しました。
お客さんの半分以上が外人さんだったけれど、職場の同僚が見に来てくれたので、彼と話をしたりしているうちにわたしの時間に。
準備不足というわけではないけれど、「アドリブなんてほんとうにできるのかしら」と緊張はしていた。
でも、始まってみたら不思議と緊張感は消え去って。
本番でしか思いつかないことって、なんであるんだろう。というか、なんで土壇場でこういうことを思いつくんだろう。
もちろん、事前に描いていたストーリーのようなものはあるのだけれど、演奏しながら湧き出してくるアイディアを心のどこかで不思議に思いつつそれを優先しながら、モジュラーシンセサイザーたちと Ableton Live の出す音に身を委ね、ときに変化を加え、またそれに身を委ねて……としているうちに、20分が終わった。

拍手と歓声がうれしくて、思わずガッツポーズしたりして。
終わった直後に、Sissisters さんが駆け寄って肩を抱いてくれて、「前回よりもすごくよかったよ!」と言ってくれたのがうれしかった。
カメラが自動電源 off になっていて撮影と録音ができていなかったという、毎度毎度のポンコツぶりも発揮してしまったけれど(演奏そのものは Ableton Live で録音できてた)。

いつも置かせていただく、チカトイズさんの作品たちです。
終わったあと、平野さんにビールを一杯おごっていただいて、解放感とアルコールと他の人の音に酔いしれるのは、いつも通り。
出演者の全員から、「すごくよかった」「素敵な演奏をありがとう」と声をかけていただけたのは、なんだろう、うれしいのはもちろんなんだけど、胸が熱くなるというか、感謝に堪えないという感じで。
だって、みなさんの演奏は、あまりに気持ちよくて、あまりに素晴らしすぎたから。
ばねとりこさんが使う「音浴び」っていう言葉が好きなんだけど、まさにそんな感じだった。
ノイズを浴びせかけられて、浄化されるような、そんな感覚。
相変わらずわたしは写真も動画も撮影していないし、録音もしていないので、当日の様子は出演者のみなさんの Instagram などをご覧になってください。
当日は夜に別の場所でノイズイベントがあったので、みなさんもそちらに早々に移動なさることになっていた。
終演後、いそいそと片付けをしながら、お互いに音源を交換し合ったり、一緒に写真を撮ってもらったりして。
わたしは別件があって夜のイベントには行けなかったので、environment 0g の階段を上ったところで、みなさんとお別れ。
ライブに出たのはこれで四回目だけれど、終わったあとの「やり切った」「終わった」という解放感が一番強かったのが今回だった。
緊張あっての弛緩なのだから、解放感が強いのは、始まる前の緊張感もそれだけ強かったということなのだろうけど、それだけではなくて、始まる前に想定していたものより良いと思える演奏ができたから、だと思う。
自分の中での基準にしか照らしていないけれども、この「やり切った」という解放感は、病みつきになる。
やっぱり、ライブってすごいし、好きだなあ。そして、アドリブっていいなあ、面白かったなあ。
というわけで、今回の演奏も Youtube で公開したいのだけれど、映像がない。タイトルも決まってない。
演奏しているときに、どういうわけか頭の中に、先述の『マダム・エドワルダ』が何度も浮かんでは消えていたので、タイトルはこれかなと思っているけれど。
どういう形で発表するか、ちょっと考えます。
最後にもう一度。
お越しくださったお客様、素晴らしいライブにふたたび出演する機会をくださったばねとりこさん、共演者の皆様、そして environment 0g の平野さんに、心よりお礼申し上げます。
ほんとうにありがとうございました。