avaritia

「強欲」。

言葉や、言葉が表そうとする概念のようなものを音に変換する、あるいは音で表現するというのは、難しいとか簡単とかいう話ではなくて、ものすごく個人的な結果にしかなり得ないはずで。
しかも、それを聴いた誰かがそれを作った誰かの変換過程をトレースできるかと言えば、たぶんできなくって。もっと言えば、作った当人ですら、それを聴いた今の自分がそれを作った当時の自分の変換過程を再現できるかどうかあやしいような気すらしていて。
B に変換された A が B に戻るとは限らない。「戻る」可能性を手放すというか、可能性がゼロかも知れないという事実を受け入れるというか。それが非言語芸術、とりわけ抽象的なそれのあるべき姿なのだろうとずっと考えている。
本当は非言語芸術に限った話でもないのだろうとも思っているけれど。

フィールドレコーディングのような「すでにある音」を使うときは、それをどう加工するか、重ねるかということを考える。このサンプルはいい音だなあ、とニコニコしちゃうのがスタートで、これとあれをこんな風に重ねてみたら……とか、あんなエフェクトを加えてみたら……という風にアイディアがふくらんでいく。
それはそれでとても楽しいし大好きなのだけれど、「何もない」ところに一から音を作って並べていくのも、また別の楽しさ、面白さがある。
今回は後者の方法で作ってみることにした。
作ってみることにした、というか、いつものように Ableton Live で遊んでいるうちに、このままいけちゃいそうだなという感覚があったので進んでみた、と言う方が正しいのだけれど。

そもそもは、ダウンロードしたまま忘れていた M4L デバイスを思い出して、ちょっとそれで遊んでみていたのがきっかけで。
久しぶりに MIDI トラックにソフトシンセやらエフェクトデバイスやらを並べて音を出しているうちに、どんどん興が乗って、気がついたら 17 トラックの音の重なりができていた。
わたしはほんとうにランダムな要素、自分では制御できないパラメータを取り入れるのが好きなのだなと思う。LFO を 100 個以上使ったのは、わたし史上最多のはず。
お互いを無視して自分勝手に鳴っているはずの 17 トラックが、図らずも旋律のようなものを奏でてしまう状況が作れたらいいなと思いながら作ってみたのだけれど。
CPU 負荷が 60%を越えていたけれど、MacBook Air はがんばってくれた。

今回は、音の配置(という言い方で合ってるのかな)やエフェクトも全部 Ableton Live でやって、Studio One ではトリミングとオートメーションだけ。
シリーズの他の音とゲインやら何やらを合わせる作業も Studio One でやっているけれど。
できているかどうかはともかく、トラックごとのゲインやら何やらがミキシングやマスタリングに大きく影響することがポンコツにもようやく理解できるようになってきて、音作りの最初の段階からミキシングやマスタリングまで見通しながら取りかかるべきだということもわかってきた。わかってきただけで、できてきたとは言ってない。
でも、早く「できてきた」と言えるようになりたいな、とも思う。まだまだ勉強は続くということなのだろう。

というわけで、新作 “avaritia” です。

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