変成作用のほう。
一つ前の記事で、音を二つ作ったことを書いた。
そのうちの一つはホテルでミキシングまで終えて、一晩経ってから帰り道で聴いて完成したんだけど。
もう一つ(A)と、去年の 11 月に作っていた音(B)も完成させたくて、ゴニョゴニョしていた。
先に A を完成させて、Elly に聴いてもらったり、一晩置いて聴き直したりして。
これを作成中のアルバムに入れるかどうか、二人で話し合ったけれど、B ができてから考えようということでいったんペンディング。
B も完成まであと数歩だったので、仕上げてからElly に聴いてもらって、再び二人で話し合い。
ホテルで完成させたのと対になるのは B だねと一致して、A はシングルリリースすることにした。
その A が今回の新作 “recrystallization” ということになった。
どこかで無料でもらったサンプルパックの音だけを使っている。
音数というか使った音源の数もすごく少なくて。初めはもっと使っていたけれど、これも要らないあれも要らないってどんどん削っていった。
そのせいか、ゲインがぜんぜん足りなくて、Studio One に入れてからあわてて底上げしたりしたけれど、このか細いような音が、今のわたしが聴きたい音ではある。
こういう音をずうっと聴いていたいというのが、まともな精神状態なのか自分では判断がつかない。
だからといって他人に判断してもらいたいわけでもないのだけれど。
Elly が気に入ってくれたという、それだけでわたしにはじゅうぶん。
タイトルの「再結晶」は化学ではなくて地学の、変成作用のほう。
一つ前の記事で、「日常のいろんなことが澱のように心の中に積み重なって淀んで」と書いたけれど、このタイトルを選んだのは、その重みによってわたしの中で結晶化した何かが、ひょんなことで姿を現したような気がしているから。
そしてその「何か」は、あまりきれいではない色に染まってしまったわたしの心の中で、少しだけきれいな色で、少しだけ透明で、少しだけ光を放って、拾い上げられるのを待っていたから。
その「何か」は、たぶん、愛。
というわけで、新作 “recrystallization” です。