現場性と一回性 – 二度目のライブ出演 –

とんでもない面々による、とんでもなく上質なパーティ。

一昨日は、こちらのライブに参加させていただきました。
ご覧になって下さった方々、共演させていただいた方々、そして主催の労を執って下さった方々に、心よりお礼申し上げます。

タイムテーブルはこんな感じ(敬称略)。

[パフォーマンス]
開会宣言:environment 0g & the Wave
展示・談話・ツイスターゲーム (DJ: Junya Hirano
ライブ:ムム
ライブ:Zenro
ライブ:石原雄治SUPER ULTRA 箱井上大輔菊池航
展示・談話・ツイスターゲーム (DJ: Junya Hirano
新国誠一の詩の朗読:drumtosax+観客飛び入り
ライブ:Miss Canine Hoe
ライブ:江崎將史
ライブ:HIWATASHIJuri SuzueJunya Hirano

機材準備とサウンドチェックのため、11時過ぎに会場入り。
いつも通り何かしらの間違いを犯しては修正しながらサウンドチェックを終了し、展示を拝見しながらいろいろ教わったり、平野さんがディレクションした CD に Elly と二人でサインをもらったり、談笑したりしているうちに開会時間に。

開会宣言の原稿

開会宣言は ChatGPT に出力させたとのこと。
最近よく聞くワードではあるけれど、ほぼ何も知らず触れずにいるので、なんというか、便利なツールにあふれる時代だなあと思ったり。

こういう記事を書くときは、どこまで何を書けばいいんだろうといつも悩むんだけど、タイムテーブルのことを全部書いていってもつまらないだろうし、とんでもなく長くなるから、パフォーマーや展示者のみなさまの SNS をご覧いただくことにして。
コンクリートポエトリーあるいは新国誠一の詩をどう解釈するかというのは、今回のパフォーマーと展示者の全員が向き合った課題だとは思うのだけれど、見事にみなさんが異なる解釈を示していたのが、面白くもあり、コンクリートポエトリーの懐の深さを感じもしたり。
個人的には、松本さんや井上さんとお話しした中で、「どう向き合うか」(そもそも「向き合う」のか「寄り添う」のかも含めて)について、とても深く考えていらっしゃることが非常に興味深かったし、わたしたち自身の次の制作へのヒントをいただくきっかけにもなった。

それはそれとして、全員のパフォーマンスや展示は、もうとんでもなくかっこよくて、Elly と二人で聴き惚れる、見惚れるばかり。
世界にはこんなにたくさんの、まだ聞いたことのない音や、まだ見たことのない表現があるのかと思うと、自分の見識の狭さへの呆れや驚きと、目の前に広がる沃野への希望のようなものを、同時に感じる。
箱さんが JMT SYNTH NDV-2 を使ってらっしゃったのも、JMT SYNTH ファンの一人としてはうれしかったり。
朗読してみませんか、と突然指名されたばねとりこさんも、(当然だけど)さすがのパフォーマンスだった。
自分の声を操り、楽器のように使える人というのは、今回で言えばムムさんもそうだけれど、すごいなあと思う。
そう思うならお前もやってみればいいじゃないかと、自分に対して思うこともあるのだけれど、勇気が出ずにいるというか、それ以前に技術がない。

ツイスターゲーム「コンクリートポエトリーツイスター」も、タイムテーブルをもらったときには、正直「なんだこれ?」と思っていたけれど、蓋を開けてみたらとても面白くて。
参加者がガチで身体を張っていたのと、上手な進行の賜物だろう。
次回は「コンクリートポエトリー福笑い」が出てくるという噂も……。今から楽しみ。

そろそろ自分たちのことを。
これまでの記事の中でも何度か触れていたけど、今回のイベントを知ったあたりから、新国誠一の詩を題材にして、映像と音を合わせたものはいくつか作っていて。
セカンドアルバムや他の音も作りつつ、Elly の協力を得て武蔵野美術大学に新国に関連する資料を漁りに行ったりして、今回のパフォーマンスの準備も同時に進めていた。
そういう意味では、二人で何ヶ月もかけて準備した、と言ってもたぶん間違いじゃないんだろう。
前日の夜になってもまだ手を入れて、Elly に見てもらったりしたけど。

そもそも「新国誠一のカバー」がテーマだと聞いていた(ような気がする)ので、どこかの記事でも一度?何度も?書いたけど、「彼の詩を図形楽譜として解釈してみたらどうなるだろう?」という発想からスタートし、テーマに沿っていると自分が感じた映画のワンシーンや写真を加工して、間や背景に挟み込んだりしながら、作っていった。
図形楽譜として、とか言ってるけれど、そういう教育を受けているわけではないので、どこまでも自己流でしかないし、動画編集も素人なので、その道のプロならもっと手早く上手にできるんだろうなあと思いながら、気の遠くなるような手作業を繰り返したり。
完成度は観ていただいた方の判断に委ねるしかないけれど、妥協だけはしなかったつもり。

一方で、ファーストアルバムのボーナストラックと同じく、ライブでできあがる作品にしようという企みがあって。
この記事のタイトルにもした「現場性と一回性」こそがライブの醍醐味だと思うし、それを少しでも音に取り入れて完成させたいという思いがあった。
そのために使えるものはなんだろうと考えたら、手もとにあった SOMA laboratory ETHER V2 と、ラジオ。
ETHER V2 でライブハウスの中を漂う電磁波を拾い、ラジオでライブハウスの外で飛び交う電波を拾って、持っていったモジュラーシンセサイザーで/と混ぜ合わせて、Ableton Live で音を整えてから、準備した音源と組み合わせて使うことで、現場性と一回性を多少なりとも盛り込めるのではないかと考えて、やってみた。
混ぜ合わせるのには Bastl Instruments Bestie を使ったんだけれど、これがもう、とんでもなくできるやつで。
今回は USB ケーブルで給電したんだけど、あとから声をかけて下さったお客さんが、乾電池の方が電源の良し悪しに左右されずに、一番いい音で使えると教えてくれたので、次回は乾電池を使ってみようと思う。

今回使ったモジュラーシンセサイザーのセットアップ

それにしても。
自分たちは一番手か二番手くらいでパフォーマンスすると当然のように思い込んでいたので、前々日の夜にタイムテーブルを見た瞬間、あんまりびっくりして、夜道で「ほえぁ?」みたいな変な声が出た。
トリ前というのか、大トリ前のトリというのか、どちらが正しいのかわからないけれど、まさかそんな位置に置かれるとは思っていなかったので、これは、具体的に何がというわけじゃないけど、まずい気がするぞと。
まずい気がするからといって何かを変えるわけでもないし、自分たちは自分たちのできることをせいいっぱいやるだけなんだけれど、緊張の度合いというか、しかたというか、そのあたりが違うし。

ともあれ、出番はくるわけで。
セットの前に立ってみたら MacBook の挙動がおかしくなってて、再起動のせいでお待たせするというトラブルはあったけれど、何とか始められて。
environment 0g の音響がすごくよいということももちろんあるのだけれど、本番だからこそできることがあるというか、事前に考えていたことはどこかに吹っ飛んでしまって、その場で思いつく、というより、頭のどこかから止めどなくあふれ出してくるアイディアに急かされるように体を動かしているうちに、気づいたら終わっていたという感覚。
かわいいからと Elly からもらって、機材のすき間に置いておいたアヒルのライトが、説明書にそんなこと書いてないのに不規則に明滅したりしてびっくりしたけれど、満足する音を出せたと思えて終えられたのは幸せなことだったと思う。

ライブハウスとアヒルとわたし

演奏後には、非常にありがたいことに、「よかった」というお声がけをたくさんいただいて。
ムムさんにいたっては、ハグしてくれて、ビールやらペルノンやら飲ませていただいて。
わたしのライブから、映画 “Venom and Eternity” レトリスム Lettrism の発案者イジドール・イズー Isidore Isou が 1951 年に制作。邦題は『涎と永遠についての概論』)を連想した、と興奮気味に伝えてくれて、キョトンとしているわたしの iPhone で検索しながら、「これだよ、これ!」と教えてくれた。
レトリスムについては聞きかじったことがあるくらいで、誰がとか何がという知識は皆無だったし、件の映画についても、カンヌで観た客が暴動を起こして警察が放水する騒ぎになったというエピソードしか知らない(要するに観てない)ので、吉本隆明の言葉を借りれば「自分に教養がないことに驚」き呆れながら、でも一方で自分が最近強い興味を感じているダダやシュルレアリスムに通じるレトリスムを、フランス人であるムムさんに想起させたことがうれしくて、ちょっと誇らしくもあったりして。
松本さんは松本さんで、X で「新国誠一の詩が轟音のなかで現れゆく/1960年代の詩世界が現代的な解釈で/アップデートされる様が尖鋭的ッ!!」「新国誠一 の音声詩『オ・ン・ナ』が/今まで見たことないようなアプローチで/詩作表現だけでは現せない領域のよさエグぃ」と動画までつけて評して下さり、松本さんの創作に感動させていただいた身としては、こちらもとてもうれしくて誇らしい。

参加者全員が「楽しかった」という思いを共有して終わったことがひしひしと感じられるイベントだったし、Vol.2 もやります!という閉会宣言だったので、「次回、呼んでいただけなかったら恨みますから」と冗談交じりに主催者に伝えつつ、みなさんに挨拶をして会場をあとにした。
ともかく、ほんとうに楽しい、中身の濃い、そして何よりも非常に上質なイベントであったと思う。
次回はどこに向かうのか、たぶん誰にもまだ見えていないけれど、向かった先がどこであれ、そこで楽しんでしまうことができる人たちの集まりだったと思うし、その一隅をわたしたちが照らすことができているのなら、それはとても幸せで、何度でも言うけど、誇らしいことだと感じている。

ライブで「完成」させた作品は……どう発表すればいいのかちょっと悩んでいる(映画のワンシーンとか、もろ無断拝借だし)。
うまいこと著作権に触れないようにできたら、発表させていただきますので、もう少し時間をちょうだいできれば。

なんとかなった気がするので、YouTube にアップしました。

最後にもう一度。
ご覧になって下さった方々、共演させていただいた方々、そして主催の労を執って下さった方々に、心よりお礼申し上げます。
すばらしいパーティーに参加できたこと、とてもうれしかったし、何よりとても楽しかったです。
そして、いつも最大限の協力と尽力と、励ましと率直な感想と、そして賛辞を惜しみなく与えてくれる Elly にも、心からの感謝を。

ありがとうございました!!!
そしてこれからもよろしくお願いします!!!

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