obscure

音の壁、あるいは、音の雨。

「音の壁」という言葉を、シンセサイザーに関連する何かを読んでいるとたまに目にする。
そのたびに、どんな壁なんだろうなあって想像する。
目の前に立ったら、耳をくっつけたら、中を通り抜けたら、どんな音がするんだろうって思い浮かべるのはけっこう楽しい。

一度、「音の壁を作ってみた」みたいな記事を読んで、そこにあった音源も聴いて、わたしの想像と全然違っていてすごくがっかりした記憶がある。
ただ、この記憶が本当にわたしのした経験なのかどうか、どういうわけか自信が持てない。
そんな経験なんてしていなくて、わたしが頭の中で作った偽物の物語なんじゃないかと、この記憶を思い出すたびにそう思う。なんだかキルドレみたいだけど。

「音の雨」という言葉は、intellijel のその名も Rainmaker というディレイモジュールを紹介するときに使われていて、原理は何となく理解できるんだけど、それが実際に発音されたら「音の雨」になるのかどうかは、わたしのポンコツ頭脳ではよく分からない。
いつか触れたらいいなとは思うけど、あんなにすごそうなモジュールはきっと使いこなせない。

「音の雨」と「雨の音」は違うと分かっていても、ポンコツだから、気がつくと雨の音を連想している自分がいる。
雨は嫌いだけど雨の音は嫌いじゃないから、よけいにそうなってしまうのかもしれない。

今回の新作 “obscure” は 3 曲ひとかたまり構想の第二楽章で、”melt” と “severance” の間に挟まるもの。
間に挟まるということを別に意識せずに作っていたんだけど、作り直すことにしたら意識してしまって。
どうせなら徹底的に意識してやろうと思って、”melt” と “severance” の音源だけを使って作ってみた。

「輪郭」という比喩がふさわしいのか分からないけど。
音の輪郭を徹底的に消したいという思いと、それを際立たせたいという思いの間で揺れながら作っていたのも、”melt”(融解)と “severance”(隔絶) の間にわたし自身が挟まれていたからなのかもしれない。

作り終えたときに、ふと「音の壁」という言葉を思い出した。
今のわたしの、この言葉に対する答えだといってもいいのかもしれない。
明日には「すみません、昨日の答え、間違ってました」って言ってそうな気もするけれど。

というわけで、新作 “obscure” です。3 曲ひとかたまり構想が、ようやく終わりました。

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