贈り物/機材

揺り戻しというか、回帰というか。

この記事で書いたんだけど、ライブの準備やらアルバム制作やらをしている中で、もうこれからは Ableton Live だけでいいんじゃないかしら、と考えるようになったりしていて。
モジュラーシンセサイザーや変な機材は好きなんだけど、好きだからといって毎回使っているわけでもないし。
Ableton Live はハードウェアのように使える、とても「実験的」な DAW だと常々感じているし、こないだ久しぶりに呼んだ Luke Sanger のインタビューで、彼も同じようなことを言っていたし。

「Liveでのアプローチとハードウェアでのアプローチが、すごく似てきたと思う」とSangerは考えを巡らせる。 「僕は何でもすごく実験的に使うから、モジュラーシンセを扱うみたいにプラグインを扱う。 MIDIがなかったLive 1から使っている身としては、単なるDAWってだけじゃなくて実験的なツールだった当時に戻ったような感じだね」 

『Luke Sanger:職人のアンビエント制作ツール』 Ableton

もちろん、Luke Sanger に比べたらわたしなんて地を這う蟻のようなものでしかないことは分かっているのだけれど、彼のインタビューをよく思い出して繰り返し読む理由の一つは、Ableton Live をそんな風に使っていいんだって確認したいからなんだろうな、きっと。

手もとにある機材を全部売ってしまって、一時期のメルツバウのライブのように、MacBook とだけ向き合う感じでいこうかな、なんて思っていたわけなんだけど。
以前の記事の通り、ぼんやりとした決意はライブに出演させていただいた後にあっさりと覆って。
ライブで自分が MacBook や iPad だけではなくてハードウェアも使って演奏したというのもその理由だろうし、他の出演者さんたちの機材をたくさん目の当たりにしてワクワクする自分を再確認したというのもあるだろうし、そもそも機材(というか機械とか金属)が好きという性格?嗜好? そういうのもあるとは思う。

でも、今回、件の決意があっさりと覆ったのは、Elly からの贈り物のおかげが大きい。

あれはライブの直前だったのかな。
いつものように Elly と話していたら、ライブ初出演のお祝いを買ってくれたと教えてくれて。
Elly のプレゼントやおみやげ、もっと言えば彼女の普段使いの持ち物についても、いつもその選択眼の確かさに驚かされるし、あまりに素敵だったりかわいかったりして、もらっても使えずに眺めて幸せな気持ちになっていると「使って!」と怒られたりもするのだけれど。
買ったのはこれだと、サイトを見せられてびっくり。
この記事でわたしが出会いを喜んでいたサイト、beatsville.jp。しかも出てきたのは NUNOMO QUN MK2
ちょっと待って。Elly がなんでこんな機材を知ってるの。
前にプレゼントしてくれた EarthQuaker Devices Afterneath はわたしがお願いしたものだったけど、今回については、わたしは QUN のことなんて Elly に一言もしゃべってないし。
というか、QUN のような「あれもこれも入っています♪こんなこともあんなこともできます♪」というタイプの機材は、その「あれ」も「これ」も覚えないといけないような気にどうしてもなってしまうので、普段の制作時に使う機材としてはちょっと敬遠してしまうこともあったりして。
QUN MK2 も国内販売が始まったときには一通り、レビューまでチェックはしたけれど、そこで終わっていた。

今後、ライブなどで使うときに、小さくて高機能なシンセサイザーは重宝するのではないか。
Elly はそう思ってこれを選んでくれたみたい。
ライブに出るという経験を得た今、ほんとうにその通りだと思う。
初出演、おめでとう。おつかれさま。ほんとうにすごくいい演奏だったよ。
その言葉とともに Elly が手渡してくれた QUN MK2 で何がどこまでできるのか、現時点のわたしにはまだまだ未知数だけど、マニュアルを読んだり動画を見たりしながら、少しずつ勉強していこうと思ってるところ。

そしてもう一つ。
こっちはライブを終えたあとだったかな、Elly といつものように話していて、Beatsville のサイトでこの機材がずっと気になってる、と何の気なしに伝えたら、ライブ初出演のお祝いをそれにするか QUN MK2 にするか迷ったんだと聞いてまたびっくり。
QUN のような「シンセサイザーでござる」という感じのものならお祝いに選んでくれるのも分かるんだけど、もう一つの方は「もらったはいいけど、どうするの、これ…」ともなりかねないような機材だから。
それがこれ。Gijs GieskesAnalog HD2。しかもでかいやつ
この人の存在も Beatsville のおかげで知ったんだけど、ほんとにもう、作るものがいちいちたまらなくって。こういう人や物をピックアップして紹介どころか手に入れさせてくれる Beatsville もすごいと思うけど。
そして、シンセサイザーや機材に関する知識はほぼ皆無であるはずの Elly が、わたしが欲しいものを見抜いてくれていたことも、すごいというか、なんだろう、「すごい」という言葉じゃ足りないくらい。
こちらも、今度はライブ成功のお祝いという名目で、Elly からのたくさんのプレゼントのひとつとして、わたしの宝物に加わることとなった。

ライブ終了後、いくつかの機材は、もっと使ってくれる人のもとに送り出してあげたくて、買取りや下取りに出した。そんな機材はまだもう少しあるような気がするから、このお盆休みに機材を眺め回して考えてみようと思っている。
一方で、上述の二つの宝物以外にも、これから作っていきたい音を見据えて迎え入れたモジュールや機材がある。
ハードウェアがわたしにくれるワクワク感に戻って来たというか、もう一度そのワクワクを素直に受け入れて、彼らにびっくりさせられたり笑わされたりしながらする音作りを楽しんでいきたいなって思っている。

ちなみに Elly とは、次のライブではこんなの使ってこんなことしたいね、なんて話したりもしている。
「次のライブ」なんて決まってもいないから単なる妄想なんだけれど、考えてみたらわたしたちの妄想が少しずつ現実になってきているわけで、だったらもっと楽しく笑いながら妄想してた方がむしろいいんじゃないかしら、くらいの気持ちでいたりする。

そんな、このごろ。

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