産地直送シリーズという感じ(「産直」の話についてはこちらの記事もご参照ください)。
思いついたことをモジュラーシンセサイザーやハードウェアでやってみようとすると、何かしら問題が生じて、一度で思うようにできるということは、まずない。
その理由の半分くらいは、マニュアルをよく読むとちゃんと書いてあることを、わたしが読み飛ばしてしまっているせい(だって、マニュアル、ほぼ英語なんだもん>< 日本語ならちゃんと読むもん><)。
実際にモジュールに触れながらうんうん言いながら覚える方が性に合ってるし、モジュールたちと遊ぶのは面白いから、別にこれは苦にならない。
残り半分は、モジュールによって出力するCV電圧の範囲が違うということ。
これだってマニュアルを読めば分かるわけだけど、読んだところで出力可能電圧が増えたり減ったりするわけではないので、何かしらの対応を迫られる。
こうしたらどうだろう、こうやったら何が起こるのかな、といろいろ考えたり工夫したりしながら、納得できる音(というのは嘘かな。だいたいはこちらの想像をはるかに超えてきちゃうから)が出てくるまでパッチングを試したりくり返したりするのは、とても楽しい。
今回は、サンプリングした言葉をズタズタに切り刻んで、順番も再生方向もランダムに次々と再生したり重ねたりしたらどんな音になるんだろうという思いつきからスタートした。
いつもどおり、やり始めるとモジュールたちはすぐにいたずら心を出して、「こんなことだってできるんだよ」「こんな音、予想してなかったでしょ」とクスクス笑いながら、実に楽しくわたしを裏切ってくれる。
こちらは彼らの作り出す波に体を預けながら、ふくらむアイディアを一つひとつ、足したり引いたりしていく。
気がついたら数時間くらいあっという間に経っていて、いつもびっくりしてしまう。
それにしても。
人の声というのは本当に力強いというか、手強いというか。
あれやこれやと削ったりふくらましたり歪めたり押しつぶしたりしても、音が持つ「わたしは人の声でございます」という自己主張がなかなか消えない。
その自己主張を少しだけ残しつつ、大半は消しつつ……というところを狙ったつもり。
今回も新しいモジュールと新しいエフェクト、そしてフィールドレコーディングしたままほったらかしにしてあった素材をどれかひとつ、必ず使うことを自分に課していた。
結果はどれも……なんというか、すごかった。
まだまだわたしは何にも知らないんだなあって。
そして、先人の知恵というのはすさまじいものなんだなあって。
踏破されるべき未開の地が目の前に広がっていると、わたしたちはたぶんワクワクするかウンザリするかのどちらかなんだけど、音の実験に関してはワクワクしかないので、幸せなことだなと思う。
BPMの感じられない音、あるいはビートのない音を作ることを心がけているんだけど、今回はちょっとビートというか拍というか、そういうものが入り込んできている。
で、それも案外心地良かったので、次はもう少し拍というものを意識してみようかとも思ったりしている。
冒頭にも書いたけど、例によってあまりゴテゴテと装飾はせず、産地というか、実験室の台所から直送です。
誰かのお口に合いますように。
というわけで、新作 ”Quiet Music” です。