4’33” @ 4:33

何事もやってみないとわからない。

思いついた翌日の午前 4 時過ぎ。
三脚にレコーダーを取り付けて、ヘッドフォンを片手に外に出た。
それなりに田舎なので、ちょっと歩くと貯水池や広い野原があって、それなりの田舎だから夜明け前に一人で出歩いてもそんなに不安でもなくて。

空き家になったアパートの裏。金網で区切られた野原の入り口。貯水池のフェンス。行き帰り。
ひとしきり録音して、深夜の散歩を終えた。

また別の記事でちゃんと書こうと思っているんだけど。
「何かしらの『音』を作り、それを誰かに聴いてもらうためにアップロードする」という行為によって、わたしがしたいこととは何なのか。
最近はそればっかり考えている。
そればっかり考えながら、これまで読んだ本を読み返したり、新しい本を読んだり、相変わらず毎晩のように DAW やモジュラーシンセサイザーと戯れたりしている。

そうやって考え続けている中で、ふと思いついたのが今回のフィールドレコーディング。
当初は、レコーディングしたものをそのままアップロードしようと思っていた。
思っていたんだけど、風がちょっとあったのでマイクにモフモフしたカバーをかぶせたからなのか、繋いでいたヘッドフォンではとってもよく聞こえたのに、家に帰って PC に取り込んだ音がひどく小さくて。
入力音量は最大にしてたはずなんだけどなあ。やってみないと分からないものだなって思う。

それと、ヘッドフォンでレコーディングをモニターしていたせいで「選択的聴取」を強制的にストップさせられる状況(とはいえ、選択的聴取を完全にやめることはたぶんできないし、その時その時で注目(注耳?)してしまう音はどうしたってあるわけだけれど)の中で、頭の中で別の音が勝手に鳴り響いていたのが忘れられなくて。

そんな理由で、結局は録音した音源を Ableton Live に取り込んで、納得いくまでいろいろといじってみた。
ある日の午前 4 時半頃、わたしの頭の中を満たした音の洪水を、4 分 33 秒だけ、誰かにも聴いて欲しいと思って。

そしてさらに、実験もしてみた。
できあがった音の mp3 を micro SD に入れて、今年買ったけど使っていなかったポータブルカセットデッキ(本来はカセットテープの音源をデジタル化する用途で作られたものみたい)でテープに録音し、それをもう一度 micro SD に録音し直して からPC に戻して。
さらに Studio One の Pro EQ で極端に音を削り落としたりしてみた。

「テープに録ったら音がどう変わるのか」には前から興味があって。
あたたかいとかサチュレーションとか Lo-Fi とかいろいろな言われ方をしているけれど(これらは実際にはオープンリールの話なんだろうけど、そんなのわたしには手も出ないし扱えないし)、わたしの耳にはどう聞こえるようになるんだろうってずっと気になっていたので、やってみた。
ああいう音になって帰ってきたのが、何がどう作用した結果なのかはわからないけど、できあがりはけっこう好きな音だった。
壊れたときの保険にもう一台買ってから、テープを切り貼りしたりカセットを開けて改造したりして、延々とループを流してもらったりしようかしらと、ちょっと企んでいたりする。それくらいこの音は好きかも。

EQ でごっそり削ってしまうのは、前に紹介した本にヒントをもらってやってみた。
本当にこの本は素敵。
こういうときはこうする、という記述ももちろんあるんだけど、それよりも考え方や歴史的な経緯を(けっこう抽象的に)紹介し、具体的な手法は断片だけ示して、あとは自分でつっこんで調べたり、実際に手を動かしたりして初めて理解できるように書かれていることがとても多い。
今回の EQ 処理も、やってみてすごくたくさんの発見があったし、今後に繋げられるような気もしている。

というわけで、新作 “4’33” @ 4:33″ です。

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