déplacement – une session pour Modulisme

アルチュセール用語で「転移」。

何度かこのブログでも書いているけれど、Modulismeというサイトに、わたしの作品も Miss Canine Hoe 名義で参加させていただくことができました。
https://modular-station.com/modulisme/session/64/
この場を借りてもう一度、こんなに素敵な機会を惜しみなく分け与えてくれた Philippe Petit さんに心からの謝意を。

大好きなラジオ局 Modular-Station の一部門(?)である Modulisme に正式参加させていただけるというのはもちろんとても光栄なことなのだけれど、今回の作品は、わたしと Elly にとっては、二人でスタートした第二期の最初の作品という、特別な意味を持つもので。
作成途中から Elly には何度も音源を送り、聴いてもらっていた。
聴いてもらうことで、わたしもある程度は自分の音に対して客観的になることができて。
これまではずっと一人だったことを考えると、とてもうれしい変化。
この作品は、わたしと Elly の記念すべき初の共作であり、Miss Canine Hoe 名義の初作品ということになるのだと思う。

出来上がった音源を Philippe さんに送って数日後に、「ファイルサイズが大きすぎて bandcamp にアップロードできないから分割してくれ」と依頼され、たまたまその日はオフだったので、すぐに Studio One で分割し、ちょっとだけオートメーションを書いて、送った。
すると、「これではダメだから、わたしがやり直す」というメールが Philippe さんから返ってきた。
そこからのメールのやり取りで、わたしはとても大切なことを彼から教わった。

わたしの作品なのだから、彼がやり直す必要はないとも言えるわけだし、そのまま受け取って「これが彼女の作品です」と済ますこともできたはずなのに。
やり直してみせることで、そしてその意図をわたしに丁寧に伝えることで、彼は「音」を「音楽」にする方法を教えてくれた。
端的な言葉で意図と方法の両方を伝えてくれるだけでなく、参考にすべき音源もたくさん示してくれて。

だからこれは、Philippe さんとの共作でもあるのだ、などと言う気は、もちろん毛頭ない。
彼は Modulisme が提示する音楽のクオリティを保つために、本来であれば不要であったはずの編集の労を執ったのであって、彼の手を煩わせてしまったのはわたしの未熟さでしかない。
猛省すべきことであるのは重々承知しているつもりだ。
でも、恥の上塗りと知りつつ、それでも甘えたことを言わせてもらえば、「後進を引き上げよう」という彼の献身的な姿勢を、そしてそんな彼のコミュニティの隅っこに座るのを許されたことを、わたしは心から誇りに思い、そして心から感謝している。

メールのやりとりの最後に、Philippe さんから次の作品提供のオファーを受けた。
彼が教えてくれたことを「実験し、実践する機会と捉えて、やってみないか」と。
もちろん、即答で引き受けた。
次こそは。そう思う。次こそは。

タイトルの “déplacement” は「転移」という意味なのだそうだ。
twitter でアカウントを持っていたころにフォローしていた、ミシェル・フーコーのボットから教わった。

déplacement:アルチュセール用語で「転移」。ある領域から別の領域に移ること。場(place)を一回別なものに切り換えること。通過する(passer)ことで全く別の原理から成り立つ方へ持っていくということ。ただしフーコーが問題とするのは理論的転移というよりは実践的転移。

https://twitter.com/M_Foucault_jp

アルチュセールもフーコーも不勉強でまったく分からないけれど、なぜかこの言葉には何か引っかかるものを覚えて、メモしてあって。
個人的に大きな大きな内的変化を経験し、Elly とともに歩み始めた第二期の開幕を象徴するような言葉だと思い、今回のタイトルに借用することにした。
「あるちゅせーるようごで、てんい」という、口にしたときの心地良い音とリズムも気に入っている。

というわけで、Miss Canine Hoe “déplacement” です。
冒頭の画像とこの記事のアイキャッチは、わたしが作ったこの作品のアルバムアート。
Modulisme には Yan Proefrock さん(Modular-Station 主催者)が手を加えてくれたアルバムアートが使われているけれど、わたしにとってはどちらのアルバムアートも同じくらい大切なものなので。

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