ヨーロッパでデビュー、ということだと思う。
確か ele-king で、誰かのインタビュー記事を読んで、レーベルにデモを送ってみようと思い立った。
今年の 4 月の記事で書いた「やりたいこと」というのがそれ。
そもそも日本のレーベルは視野に入れていなかったので、ヨーロッパを中心に、知っているレーベルをリストアップし、音楽関係の記事や SNS や Bandcamp などからさらにレーベルの名前を拾い上げて、ウェブでそれぞれのレーベルのサイトを読みまくって、わたしたちに合いそうなところをピックアップした。
件のインタビューでも「どこからも返事すらなくて、かなり落ち込んだ」と書いてあったし、ましてやわたしたちのような駆け出しが反応をもらえるとは思っていなかった。
それでも、行動しなければ何も変わらないし、返事が来なかったとしても、こちらとしては多少の時間のロスをするだけで、他に失うものは何もないんだから、やらない手はないだろうと。
一ヶ月に一度くらい、リストの上から順番に、一回に数件ずつデモを送ってみていたが、案の定、反応はない。
ほとんどすべてのレーベルのサイトに「返事は期待しないでくれ」とあったし、Shelter Press だったかな、「1 年間にリリースしているのが 6〜10 件なのに、一日に少なくとも 5〜10 件のデモが来るんだ」と書いてあって、「なるほどなあ、そういうものなんだなあ、1/400 くらいの確率なんだなあ」とか思ってたけれど、それでも返事が来ないのはやはり多少ショックだったりして(まあ、不採用の通知がわざわざ送られてきても、それはそれでショックだっただろうけど)。
「そんなもんでしょ」と慰めてくれる Elly がいてくれたから、デモを送り続けられた。ありがとう、Elly。
一方で Instagram などで面白そうなレーベルを見つけるたびにフォローしていたら、前に書いたドイツの Adventurous Music との出会いがあったり、ライブの準備に没頭している時期があったりして、デモも送ったり送らなかったりだったんだけど、ふと思い出して、8 月初旬に、また数件に送ってみた。
返事が来ないことにも慣れてきていたので、「久しぶりに、またやっとくか」みたいな、ほんとに気楽な感じで。
すると、返事が来た。
自分の目を疑ったのはこの時以来。ずいぶん久しぶりというか、これからも年に一度は「目を疑う」のだろうか。
返事をくれたのはベルギーの Off というレーベルの Alain Lefebvre さん。わたしたちは勝手に「アランさん」と呼んでる。
送ったデモだけでなく、わたしたちの Bandcamp も試聴してくれてから、再び連絡をくれた。
当たり前だけど、手放しで迎え入れてくれたわけではなくて、「このトラックはいいが、こっちのトラックはちょっとダメかな……。”B.D.S.M.” は、わたしが気に入るボーナストラックをつけてくれたら、うちから出してもいいよ。今年はもうリリース予定が埋まっているから、来年の 2 月になるけどそれでもよければ……。」というような返事だった覚えがある。それから、具体的な契約条件などもワーッと書いてあって、「で、そっちはうちと、どうしたいの?」と。
ちょうどライブの前でバタバタしていた時期でもあったし、一方で新しいアルバムの構想もぼんやりとできあがっていたから、そのあたりを正直にぶつけて、来年の 2 月なら新しいアルバムができてるかもしれないけど、ボーナストラックは作ってみたい、とか、契約できるならぜひしたい、とか答えたような気がする。
ライブが終わったあとは、録画を編集した動画を送ったりして。
そうそう、ライブの直前に、気分転換を兼ねて実験的に作った音源を送ったら、「正直に言うが、つまらない」と言われたんだった。
彼のレーベルのカタログに鑑みれば、きっとそう言われるだろうと思っていたから、ショックとかじゃなくて、むしろ、きっちりそういうことを言ってくれる人なんだなと、かえって信頼したような感じ。
しかも、「君たちならもっとずっといいトラックが作れるはずだろ?」という、励ましの言葉までつけてくれて。
しかもしかも、それから一時間くらい後に、「さっきのトラック、よければリミックスさせてくれないか?」と。
もちろん快諾して、ステムを送った。いつ返ってくるかわからないけれど、楽しみ。
デモ送付の返事で、10 月に日本に行くから、その時に会おうとも言ってくれたので、会ってくるつもり。
英語は(読み書きはできるけど)話すのは苦手だと伝えたら、日本語もまあまあ話せるから安心しろ、と。
いったい何者なんだ、アランさん。
……とかなんとかやりとりしていた、ある日。
「10 月にリリースを予定していたアルバムがキャンセルになったから、”B.D.S.M.” のリリースを早めようと思うんだが、どうだろう? 今朝ちょっと考えてみたんだけど、うちのレーベルでの君たちの音楽の紹介にちょうどいいし、新しいアルバムの話もしていたし、コンピレーションの機会も今後あるだろうから、ボーナストラックはなくていいと思うんだ」という連絡が、アランさんから来た。
思いがけない朗報に喜びながら、あわててデータのやりとりをして。
準備ができたと言って送られてきたのが、冒頭の画像とリンク。
10 月になったら宣伝を開始していいと言われたので、この記事は予約投稿で書いてます。
というわけで。
わたしたちのアルバム “B.D.S.M.” が、ベルギーの Off から、来る 10 月 11 日にリリースされます!
Apple Music とか Spotify とか、そういうサービスにも配信されるようで、それはちゃんと聞いてなかったから、びっくりしてます。
うれしいから、もう一度載せちゃいます。
ヨーロッパでデビューとか夢見ちゃうよねー、なんて Elly とはよく笑い合っていたんだけれど。
まさかそれが現実になるとは……と Elly に言ったら、「わたしは Mytyl の才能を信じてたわよ?」と返ってきた。
そう、Elly はいつも、ほんとに「いつも」わたしを信じてくれている。
わたしは、自分に才能があるなんてどうしても思えないけれど、最近、人間椅子の和嶋慎治さんのこの言葉を読んで、Elly が信じてくれてるのに、自分が自分を信じないのは間違っているなって思った。
自分の才能を信じるしかないんですよ。みんな、辞める理由はほぼ、自分に才能がないって思っちゃうことだと思いますよ。そこで「いや、俺には才能があるんだ」て思える、馬鹿な人が続けるんだと思う。あらゆるジャンルで。「信じられる」ていう、ちょっと頭のおかしい人が続けられるんだよ。
「苦しみを楽しめ!」 人間椅子・和嶋慎治の屈折人生を支えた光
わたしについて言えば、馬鹿で頭がおかしいことには人一倍の自信があるし、やってみたいこともまだまだたくさんあるし、一緒にやりたいって(こっちが勝手に)思ってる人もまだまだたくさんいる。
わたしたち二人とも、まだまだこんなところでくたばってるわけにはいかない。
こないだ一緒に痛飲した Y さんの「まだまだ、歳なんかとってる場合じゃないんですよね」って言葉が、人なつっこい笑顔とともに脳裏をよぎったりする。
ねえ、Elly? 次はどこをめざそっか?
なお、OFF との契約上、OFF でのアルバムリリースから 6 週間は、当該アルバムは OFF での独占販売となります。
すでに “B.D.S.M.” はリリースされていますが、2024年10月11日〜11月21日の 6 週間はわたしたちの Bandcamp からは購入できなくなります旨、ご理解ご了承のほどお願い申し上げます。
CD-R や USB メモリによる物販は可能ですので、ご希望の方はこちらをご一読の上、お申し込みください。
Due to an agreement with OFF, the album will be distributed exclusively by OFF for 6 weeks (October 11 – November 21, 2024) after the album’s release on OFF.
Although “B.D.S.M.” has already been self-released, it will not be available on our Bandcamp from October 11 to November 21, 2024. Thank you for your understanding.
We will be able to sell CD-Rs and USB sticks, so if you would like to do so, please contact us.
If you would like to write a review about this album (blog media, etc.), please contact us so that we can provide you with a copy of the sound source.